税務署で必要なくなる?ハンコの種類と使い分け


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税務署でハンコを使用する機会が多いのは個人事業主ですが、そもそもどのようなものを使えばよいのでしょうか。また、どういった時にハンコを必要とするのでしょうか。こちらでは、本来税務署で必要とされていたハンコの種類と使用するタイミング、個人事業主として用意すべきハンコの種類、税制改革後のハンコの取扱いなどについて見ていきます。

国によって違うハンコ事情と日本での動きを知っておこう

税務署に届け出るハンコの種類

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日本では官公庁に行くときにはハンコを持参するのが一般的で、税務署も例外ではありません。税務署に出向くのは主に法人の設立や個人事業主の開業、給与支払い事務所の開設などの届け出をするときと確定申告をするときですが、いずれの書類も押印後に提出しています。

では、税務署に届け出や申告などをするときのハンコはどの種類を用意すればいいのでしょうか。個人で使うハンコは大きく分けて実印、銀行印、認印で、法人は代表者印、銀行印、認印の三種類です。実印は住民票のある市区町村に届け出がしてあり、不動産売買や車庫証明の取得、銀行からの借入時など重要な書類に印鑑証明書を添えて押印することが多いハンコです。

代表者印は法人用の実印のようなもので、法務局に登録します。一方、銀行印は各銀行で口座開設をするときに届け出るもので、預金の引き出しや解約時などに利用します。銀行によって登録するハンコを変えることもできますし、氏名ではなくイラストのハンコでも登録可能ですが、紛失した時や複製されたときは簡単に銀行に預けている資産を動かされてしまうので危険です。

実印と銀行印は一本ずつ所有している人がほとんどですが、認印は価格が安価でほとんどの手続きに使えることもあり、複数所有している人も少なくありません。シャチハタのようなスタンプ式ではなく、名字だけの小さめの印影が一般的です。

法人の場合、請求書や領収書などの重要な書類向けに角印、荷物の受け取りなどの簡易な手続きに丸印と使い分けているところもあります。税務署で手続きをする場合には、実印や代表者印、印鑑証明は必要ありません。認印で事足りますし、提出するたびに異なる認印を押印しても大丈夫です。

ただし、窓口で提出した書類を訂正するときなどは届出印と同じ印鑑で訂正印を押さなければならないため、使用した認印を持参しましょう。なお、スタンプ式のハンコは使うことができません。

法人のハンコ

法人はその名の通り、法的に人格を持っている会社という扱いになります。

そのため、戸籍の代わりに商業登記簿、実印の代わりに代表者印を法務局に登記しており、重要な契約をするときには個人ではなく法人として行います。

そのため、法人の代表者印は代表者の氏名を記載せず、「○○会社代表取締役之印」などとするのが一般的です。同じように、銀行印や認印も担当者が変わっても使えるように社名だけを彫ったものを使います。法人のハンコはどれも営業を続ける限り必要とされるため、使用期間が長く、頻度も高いです。

そのため、丈夫な素材で複雑な印影にするのが良いとされており、印影がくっきり出やすく、耐久性にも優れている柘植や水牛などが良く選ばれています。

個人事業主として使うハンコ

個人事業主の場合、法人のように会社のハンコを法務局に登録する必要がありませんので、事業主個人のハンコで全て済ませることは不可能ではありません。しかし、ほとんどの個人事業主が屋号(店名)をつけて事業をしていますので、事業所の住所や事業所名などの横判、屋号が記載された事業主用の屋号印と銀行印は作っておいた方が良いでしょう。

ビジネス上で契約や請求書・領収書等の発行をするときに屋号印の方が事業に対する印象が良くなりますし、プライベートと使い分けることで効率化にもつながります。ただし、実印を必要とする契約の場合には、屋号印は認印扱いなので使うことができません。

たとえ事業資金の借り入れ等、ビジネス面での契約だとしても個人の印鑑証明書と実印が必要です。

税制改正後のハンコの取扱い

デジタル化が進み、行政手続きで脱ハンコを進める一環として、令和3年4月以降、税務署の手続きについては一部を除いて押印を必要としないことにしています。

ただし、振替依頼書などの銀行印が必要な手続きについては、e-taxを利用する場合は押印不要ですが、直接書類を提出する場合には押印しなければなりません。

税制改革後も押印が義務付けられている書類は、担保関係書類や遺産分割協議書などです。各種届け出や申告に関しては、e-taxを利用する場合には元々押印は必要ありませんでしたが、今後は紙媒体で提出するときも押印不要となっています。

書式によっては押印欄が残っているものがありますが、仮に押印されていてもされていなくても問題なく受け付けてもらえます。税務署からダウンロードできる書式に関しても、順次押印欄を省いた書式に変更されていく予定です。

脱ハンコが進む中で

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行政手続きに関しては、認印は廃止の方向で動いています。実際、税務署では既に押印の義務化がなくなっていますし、今後も認印を必要としなくなる手続きは増えていくでしょう。また、銀行印も地方銀行ではいまだに登録する必要がありますが、インターネット銀行では印鑑登録なしに口座を取得して、キャッシュカードやオンラインで資金移動ができるようになっています。

これらのことから、将来的に認印や銀行印の出番は大幅に減少するであろうことは想像に難くありませんが、全く使わない状態になるまではまだ時間が必要です。

加えて、実印を必要とする書類に関しては電子契約で済ませられないものも多く、使う機会が減ったとしてもきちんとしたものを用意しておくに越したことはありません。

デジタル化が進んでも継続してハンコを使いたいという意見や、必要に応じて電子認証とハンコを使い分ける予定という意見が過半数を占めていますので、これから購入する予定がある人は、納得いくものをそろえておきましょう。

根強く残るハンコ文化

リモートワークや電子契約が進む中で、これまで絶対視されてきたハンコ文化は徐々に廃れていきます。しかし、それでもハンコを必要とする機会がすべて失われる可能性はほとんどありませんので、用途に応じて長く使えるものを保管しておくようにしましょう。

書体や印材など、自分が気に入ったものを選べば愛着もわいてくるものです。